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 morphに遊びに来る誰にも、ダンスをやっている友人や知人がいるのではないだろうか。かつてはアンダーグラウンドとみなされていたストリートダンスは、もはや一過性のブームなどではなく、今や確実に日本のカルチャーの一部として定着している。近年では健康志向の高まりもあって、フィットネスとしてダンスを始めるという人々もでてきた。そんなシーンの拡がりやその裾野を見つめ、多くの優秀なダンサーやレッスンプロを輩出し続けてきた一人が、今回紹介するSUGUYAだ。

 「二十歳の時に東京に出てきてから12年半、正月以外はずっと休みはとってないですね」。自身もHIPHOPダンサーとして表舞台で活躍する一方で、彼は一貫してダンススクールのインストラクターとして活動のベースを置く。オフィシャルサイトのスケジュール欄を見ると、月曜から日曜までレギュラーレッスンを16本、スタジオからスポーツクラブまで都内各所で行うほか、更に個人レッスンなどで後進の指導にもあたっているという。今でもなぜそこまでして地道な仕事を続けているのだろうか。

 「ひとつは、ダンスで生きていこうと上京した時に、食べていくのも大変で、その苦労を忘れたくないということがどこかにありますね。そして、この浮き沈みの激しい業界でいろんな人を見てきた経験上、ダンサーとしてどんな仕事が入ってこようと、レッスンの仕事をベースに持っていたほうがいいと後輩たちにも指導してきたので、自分が見本を見せなければということでしょうかね」。ここ10年でストリートダンスをとりまく社会的な認知や評価も変化してきてはいるが、それまでには狭い業界レベルでもスキルやキャリアに対する待遇面で不当に扱われるなど、辛酸を舐めてきた場面が数々あったに違いない。「それは僕ら側にも原因があったとは思うんですよね。みなスタートが一般の人のような社会経験もなくダンスだけに打ちこんできた人が多いので、いざ仕事が入って社会とリアルに出会った時に、ギャラの交渉の方法も知らなかったり、自分のことで精いっぱいでシーン全体のことま考えて対応してこなかった面があった。そういう面でのシーンの底上げを図るというか、ダンサーたちがもっと活躍できる環境や場を作っていくのが僕の役割じゃないかと思っています」

 スポーツ選手と同じように、身一つで生きていくダンサーにとって、第一線で活躍できる期間はそう長くはない。いずれステージから降りる時がきた時に、人生のプランを立てられるのか。次なるステージをサポートする環境は整っているのか。SUGUYAはダンスカルチャーをさらに根付かせるために真剣に考えている。「安易にプロになりたいと言う後輩たちには徹底的に指導しますし、進学や就職と迷っている教え子がいたら、絶対そちらを勧めています。それでもこの道に入りたいとイメージを強く持っている者だけが生き残っていける厳しい世界なんです」。教え子たちには礼儀や社会の常識などにも考えを及ばせるように話もするという。後輩たちにとって良き兄貴であり、教師のような存在なのだ。それは翻って本来のHIPHOPの精神とも繋がっているとは言えないか。

 もちろん、新たな才能が出てくるためには底辺を拡げることが重要だ。「もっと多くの人にダンスの楽しさを知ってもらいたい」。彼がレッスンを12年以上毎日続けている本当の理由はそれだろう。現在隔月で行なっている“GACCHO! DP”というイベントは、誰でも参加自由で、深夜でなく休日の昼間から、クラブでなくライブハウスでの開催という形式だ。今年5月には、志を同じくするインストラクターたちと合同で、生徒たちの発表会を兼ねた大規模な自主イベント「ヒカリノアジト」を開催。大成功に終わった公演のエンディングでは、出場者356人全員からのメッセージカードがサプライズとして渡され、感極まって皆に感謝していたSUGUYAの姿は多くの人の目に焼き付いた。「大変なことはいっぱいあるんですけど、投げたボールが必ず大きくなって返ってくるんですよね。それだけで踊りもイベントも続けられる」。

 来年はシーンの活性化のために新たな仕掛けを考えているという。アジトに集まった“光”が外へ向かって輝くための舞台。その「第2章」へ向けた胎動は、もう誰にも止められない。

Interview&text : Eiji Kobayashi


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