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 作家、芸人、ミュージシャン、アーティスト、クリエイター...、呼び方は何 でもいい、何かモノを創作している人間は、その成長時期に、一度は自らを真正 面から見つめるという作業が必要になるのではないだろうか。アイデアや器用さ だけでは行き詰まる時が必ず来る。初めから完璧な人間などいない。理想と現実 の差をしっかりと直視し、その壁を乗り越えようと必死にもがいた人だけが夢を 実現することができるし、心に訴える作品を残すことができるのだ。

 大阪発の「人情パンク!」を掲げて、関西弁でありのままの気持ちを爆発させ る3人組、fullgallopも、4年目を迎えて、まさにその作業を通してワンステー ジ上へと飛躍しつつあるバンドだ。10月1日に、約2年ぶりとなるセカンドアル バム『君のかけら』を発売したばかりだが、収録曲「雨・雪・中目黒」は、同じ く収録曲の「東京赤ランプ」とともに、尾崎豊など数々のアーティストを手がけ た佐藤輝監督が手がけたPVがYouTubeなどでいち早く配信され、発売前から USENのインディーズランキングのトップを獲得するなど注目が集まっている。

 彼らの躍進の背景にはいくつかの理由が考えられる。まずは活動拠点である地 元大阪での地道な活動があること。3人は、2004年に現メンバーで活動を開始す ると同時に、天王寺のライブハウスで「ROCKSTOCK」という自主イベントを毎週 (!)行っていて、その数はすでに160回を超えているという。その地元の街と 人への愛着は、アルバム冒頭を飾る〈JET〜ライブハウスと紙飛行機〜〉にしっ かりと込められている。そこで歌われる下町的な人情あふれる情景に、訪れたこ とのない人も温かみを感じさせると同時に、自分の「町」の懐かしささえ思い起 こさせる。

 そして当然fullgallopの特徴として、歌詞が関西弁で書かれ、歌われることが 挙げられる。何故、世の中で流通している歌はほとんど当り前のように共通語で 歌われるのか? 普段は地元の言葉で話し、ステージでもMCは素でしゃべりな がら、歌詞ではなぜ違う言葉遣いなのか? それはより多くの人へ伝えやすくす るためなのかもしれない。が、だとしたら、巷の音楽で所々差し挟まれる英語は 何なのだろう? もちろん彼らがそう回りくどく考えたわけではない。もっとシ ンプルに、「関西弁でしか伝えられへんことがある」と確信をもっているから だ。そうして伝えられる飾りのない言葉で綴られた気持ちは、よりリアリティを もって僕らに届けられることとなった。

 Vo.&Gt.を担当しすべての作詞を手がけるのんぺに話を聞くと、実は音楽を始 めた頃は、「自分も最初は関西弁では書いてなかった」という。自らの言葉で歌 いだしてからも、「リズムに乗りにくいところもあ」ったりして、試行錯誤が続 いた。しかしその結果、言葉と連動して楽曲自体もオリジナリティを備えた 「fullgallopサウンド」が獲得することができたと言える。

 さらに今回のアルバムで注目したいのが、のんぺのプライベートな実体験を素 材としたモチーフに、よりダイレクトな感情が歌詞となってぶつけられている点 だ。見知らぬ東京の街でのストリートライブの日々に思いを馳せた大阪と再確認 した本来の目標を、工事中の灯に重ね合わせた〈東京赤ランプ〉。失恋直後の孤 独感を二人の思い出の場所で噛みしめる〈君のかけら〉。それは、こういった作 品たちにはっきりと刻印されている。

 また、「自分に嘘をついてるのは誰だ//言い訳ばっかしているのは誰だ」と、 ふて腐れている「弱虫ヘッポコボーイ」たちの目を覚ませようとする〈弱虫は誰 だ〉。のんぺは「弱虫っていうのは自分のことですね」と自嘲気味に笑ったが、 おそらく曲づくりを通して徹底的に自分と向き合ったからこそ、つかみ取ったも のがあったはずだ。その変化は、「心斎橋を歌った」という〈当り前でどうしよ うもない事がたくさんある〉の中の、「君の流した涙や汗はまた別の誰かを強く する/だから報われないなんて決して思わないで」や、「繰り返さない僕らは同 じ過ちを/ほんま格好悪くてもええから嘘はつきたくない」というフレーズに如 実に表れている。

 そして、そうした成果が最大限に引きだされたのが、レコーディング中に作っ たという〈雨・雪・中目黒〉だ。異郷での淋しさと苦しみを恋愛をオーバーラッ プさせながら、新たな決意へと至る心の動きが鮮やかに描き出されたこの名曲 は、聴く者の共感から発して、それぞれへの体験や想いへとつながっていく。す べてをさらけ出した個が、バンドのサウンドに乗って、多くの人々へたどり着 く。本当のカッコ良さがここにあるのだ。fullgallopが全国の音楽シーンを駆け 抜ける日も近い。

http://www.publicmusicworks.net/artists/fullgallop/


☆絶賛発売中☆
『君のかけら』定価:\1800(税込)[Go! Go! Records]GGR-1016
[収録曲]1. JET〜ライブハウスと紙飛行機〜/2. 弱虫は誰だ/3. 東京赤ラン プ/4. Tonight〜ジュンジュンは渡さへん〜/5. 君のかけら/6. 当たり前でど うしようもない事がたくさんある/7. 雨・雪・中目黒/8. ベイベーサラダ

Interview&text : Eiji Kobayashi


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