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 名古屋を中心に盛り上がりを見せる中部地区のヒップホップシーンは、SEAMO、nobodyknoes+、HOME MADE家族といったメジャーアーティストを輩出し、今や全国区へと広がった。morphでもこれまでにlack Of Common senseなどをプッシュしてきたが、今回紹介するのは、愛知県春日井市で活動する、弱冠19歳の“脱力ラッパー”、いも。

 「いも」とは、なんとも人を食ったような名前だが、ラップはもちろん、作詞・作曲・編曲・録音・ミックス・ギター・ジャケットデザインまでひとりで手がけるマルチクリエイターだ。もともとバンドをやっていたのだが、自分で「CDがつくりたくて」、PCソフトを購入。トラックをつくってラップをしてみたら、「いい感じになって、これでいいんじゃないかと思って」、ひとりでやるようになったのが高校2年の時だという。そうやって宅録とコンピュータを駆使し、2007年2月に念願の自主CD『はじめのいっぽ』を制作。翌月にはレコード会社に送ったデモテープから「なんだかんだいったってさぁ」が東芝EMIの第18回ウィークリーレコメンドに選ばれる。同年7月には2枚目となる『スマイル』を発表し、地元のラジオ局ZIP FMの番組でプッシュアーティスト選ばれるなど注目を集めるようになる。

 HPやSNS、myspace などを使って積極的に、というよりも当たり前に作品を公開するのはゼロ年代ならではだろう。彼の特徴は、普通の高校生が日常で感じる不安や疑問を、肩ひじ張らずに、というよりも脱力感たっぷりに歌ったところにある。モバゲータウンでも中高生を中心にじわじわと人気が拡がり、RADIO-i(愛知国際放送)とDoCoMo東海が強力プッシュする、中部地区の注目の次世代アーティストを一堂に集めたコンピレーションアルバム『MIDLAND ARTIST MOBILE COMPILATION vol.1』(2008年4月発売)に2曲が収録。今年7月にはついに、メジャーアルバム『これをきいたら“いも”がわかるCD』をリリースしたばかりだ。

 いものラップは本人自ら“脱力ラップ”と称しているように、声高に叫ぶでもなく、鋭いメッセージを発したりするのではない。だけど、注意したいのは“脱力”が“無気力”とはまったく違うものだということ。トラック自体はとてもポップだし、しっかり聴いてみれば、その歌詞はポジティブな姿勢に満ちているのがわかる。また、それはかつてのカフェブームでもてはやされたような“まったり”感とも違う。くつろぎを求めたり、現状を肯定し、安住するのではない。本人は無意識かも知れないが、身の回りのネガティブな状況を脱力によって反転させ、前に進んでいこうとする新しい戦略といってもいいかもしれない。

 リリックを見てみよう。「なんだかんだいったってさぁ」では、頭の中で考えているだけでは何も変らずそのまま過ぎてしまう日々に対して、「どんな問題だろうとさぁ 自己流で解決できたら オリジナルな道見えてくる たぶんだけど やってみればいいんじゃない!?」と提案するように問いかけ、「わんつー」では、「転んで起きてつまずいて立ち上がって滑るような毎日です」と嘆きながらも、「やってみなきゃ わからないでしょー?? 結末なんかどうだっていいじゃない 今を生きれば」とポジティブシンキング全開。「365」では「365生きてく僕らにはまだまだ時間があるの まだまだ 行けそうだなどうやら限界なんてないみたい」「今日がだめでも あしたあさって繰り返すだけ いつかは成功するかもね 明日死ぬかもなんて考えごみ箱にぽーい」と、若者であることの特権を謳う。他でもない10代の若者という等身大の視点からつむぎ出されるストレートな言葉が、同世代から共感を呼ぶのだろう。

 高校を卒業してからも、のんしゃらんと前向きに生きながら、今は「新しいアイデアがたくさんあって、曲をつくりたくてしょうがない」という。「でも実は、“脱力ラップ”と言いながら、全然ラップになってないんです(笑)」とももらした。目指すは、「FPM(田中知之)のようなヤバいセンスをもつトラックでラップをすること」。ポップとゆるさとポジティブ指向がハイセンスでブレンドされた極上の“脱力ラップ”が完成すれば、「いも」が全国区へと羽ばたく日も近い?

http://imohppp.xxxxxxxx.jp/

☆絶賛発売中☆
『これをきいたら“いも”がわかるCD』
定価:¥1,000 (税込)
発売元:喝采/販売元:キングレコード
商品番号:WTCS-1018

Interview&text : Eiji Kobayashi


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