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 Cloudy Bayは結成してまだ10カ月ながら、それだけに逆に無限の可能性を秘めたバンドだ。大阪で見出された浩太郎(vocal)を始めとして、それぞれ別々の活動をしていたOKADA(guitar)、TATSU(bass)、イトゥー(drums)が呼び寄せられて始動したプロジェクトと言ってもいいだろうか。日々練習を重ねながら形作られてきた王道とも言えるロックサウンドをベースに、まさにこれから羽ばたこうとしている原石の集合だ。すでにmorphではさまざまなアーティストのライブでオープニングアクトを務めており、この7月からは都内の他所のライブハウスでも対バン形式のアクトで武者修行を敢行し、8月13日にmorphで凱旋ライブが控えている。

 まずはメンバーそれぞれに活動してきた音楽を訊いてみると、面白いことに、みなCloudy Bayで展開するようなロックを演奏してきたわけではないことがわかった。浩太郎はバンドの経験もあるが主にR&Bを歌っていて、ダンスの素養ももっている。最年少のOKADAは中学からギターを始め、専門学校を卒業したあとサポートミュージシャンとして働くが、もともとはジャズ畑出身だ。最年長のイトゥーはなんと5歳からドラムを叩いているというキャリアの持ち主で、主にバンド活動としてはポップスをやってきた。フランス生まれのハーフであるTATSUは、10年前にメタルバンドを始め、のちにサウンドエンジニアとして働くようになり、ロンドンでの映画音楽の仕事を経て、1年前に「アドベンチャー」を求めて日本に来たばかりだった。

 考えてみれば、バンドの成り立ちというのもさまざまあって良いはずだ。そんな当たり前のことが、現状では、純粋に仲間が集まって始まるアマチュアバンドから底上げ的にプロになる形と、プロデューサー主導である意味完全パッケージされてメジャーに出されるもの、この2パターンが主流になっているのではないだろうか。これは個人的な推測だが、Cloudy Bayはいわばその中間というか、メンバーをさまざなまフィールドから良いとこ取りで集められ、ロックという新しい土壌で未知なる形を創り出すことが意図されているのではないだろうか。始めにバンドとしての方向性は示されても、その辿り着く先は決められていない。メンバーが自分たちで模索し、つかみ取っていくべきだと。

 イトゥーは自らの今のバンドのことをこう評した。「最初は言ってみれば寄せ集めだったのかもしれないですけど、このメンバーでやっていく中で、若さあふれるパワーと、やんちゃ感が出てきて、バンドとしても固まってきたし、今はやっててスゴク楽しい」。もともとお互いのことを知らない分、悪い意味での馴れ合いもないし、刺激し合い、引き出しあう幅や可能性も無尽蔵と言えるのだ。実際、ヨーロッパという日本とは全く違う基盤で活動してきたTATSUのアイデアや意見は、個人レベルでの新しい発見やメンバー同士のフィードバックも大きく、相乗効果を生み出しているという。  そしておそらく誰よりも野心を抱いている浩太郎は、「音楽性っていうのは、たぶんみんな日を追うごとに変わってると思う。将来的にどういう音楽をやりたいか、今言えるといえば言えるけど、絶対自分の中で変わるだろうっていうのがあって、それよりもまず目の前の課題を最高の結果として残してから言うべきだろうし、正直音楽性どうこうよりも、もっと大きなところでやりたいというのがある」とハングリーな一面を覗かせた。

 実は浩太郎にとっても、ハードロックというフィールドに挑戦する当初は、それまで自分がやってきたものの見直しと再構築を必然的に迫られることになり、大きな困難をともなったという。発声一つにしても、技術も大切だが、それだけではないものを求められる。そこには“ロック”とは何なのか?という永遠の問いが自然と浮かび上がってきたことだろう。しかし、その問いの大きさの分だけ、吸収する量も大きかったはずだ。現時点でも、その艶のあるボーカルは、着実に一つのスタイルを確立しつつあるように見える。

 このように複数のバックボーンをもつ4人が絡み合い、Cloudy Bayがバンドとして独自の道を進み始めた時、その航海の視界はきっと良好であるに違いない。

Interview&text : Eiji Kobayashi


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