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 HELLMETZ(ヘルメッツ)は、その名のとおり、工事現場用の黄色いヘルメットをかぶった男たちのバンドだ。ボーカルはさらにレインコートに身を包み、装着したゴーグルの奥から鋭い閃光を光らせている。しかしその風貌だけを見て侮ってはいけない。まだ結成1年余りにもかかわらず、morphで定期的に行われるライブイベント「人生いつでも工事中」は、発売と同時に即チケットが完売という人気を博す、知る人ぞ知る4人組なのだ。というのも、メンバーのMIne(G)、Muta(Dr)、Ju-ken(Ba)は、それぞれがサポートミュージシャン、セッションミュージシャンとして大物ミュージシャンとの共演も数多くこなすキャリアの持ち主で、その筋では誰もが認める実力派である。そこに超人的な個性を持ったボーカルのT- 2SubLow(テツサブロウ)が加わって、「何でもあり」の化学反応が引き起こされるオリジナリティあふれるバンドとなっているのだ。

 そもそもの結成のきかっけを聞いてみると、「最初は、Ju-kenの友人のイベントに出るための一回だけのバンドのはずだった」(Muta)というから面白い。せっかくやるのだから、普段仕事で知ってる人や無難な歌い手ではなく、「DJや絵描きであるとか、まったく自分たちと畑の違う人を呼んだら面白くなるんじゃないか」と考えて探していたところ、ヘルメットを被って歌っていたT-2SubLowに目がとまり声をかけたのだという。それが「あらゆる常識を覆す」予想以上にぶっ飛んだ存在で、見てるほうも反応が良く、一緒にやる自分たちも楽しくて、継続することになったのだと。

 一方のT- 2SubLowは、普段はソロなどで活動するアーティスト(ちなみにこの取材にもヘルメットとゴーグルを被ったまま地下鉄に乗ってきた)。声をかけられたときもメンバーの経歴などはほとんど知らず、バンドのフロントを務めるのも初めてだったというが、今では「僕が何をやっても3人の軸がしっかりしてるのでブレなくて、安心して自由に泳いがせてもらっている」という。メンバーによれば、これまでの珍事件や面白エピソードは数知れず、一発目のお披露目ライブで、バンドの象徴であるヘルメットを忘れてきたり(!)、本番直前に失踪しそうになったり、好きなときに入っていいと言われてイントロから10分間踊りまくって歌いださなかったり、曲づくりのために気合いを入れて新宿プリンスホテルの最上階に泊まってはみたものの、結局5行ぐらいの詞を書いただけでぐっすり眠ってしまったり、などなど、宇宙的なまでの自由度が半端じゃない。

 それでも、ライブでの存在感は圧倒的で、自信たっぷりにアナーキーかつパンキッシュな歌詞を歌いあげるT-2SubLowの姿は眩しく映る。『世界人間牧場計画撲滅委員会』と題された1stマキシシングルのタイトルもインパクト大だが、実は歌の中にもメッセージ性の強い言葉もちりばめられていて、T-2SubLow自身は「9.11をきっかけに、今までまったく考えたこともなかった世界のこととか、日本のこと、政治のこと、文明のことなど考えるようになった」とそのきっかけを語る。まだまだ発展途上で勉強中だというが、世界を支配するパワーや社会の欺瞞を告発し、身体の基である水や食、睡眠について研究し、宇宙と直結していた古代文明(ちなみに今はマヤ文明に嵌まっている)、精神世界への接近など、核心へまっすぐに突き進むピュアでストイックなまでのスピリチュアリズムが、危うくもあり魅力的でもある。

 たとえば、「遺伝子崩壊/覚醒/始動/爆発」、「我は直観的超右脳的クロールで泳ぐのみ!」と叫ぶ「遺伝子」という曲は、「細胞レベルから身体も心もきれいになってほしいという希望も込めて書いたハッピーチューン」(T-2SubLow)だという。CDのライナーにキーワードだけでわざと歌詞を載せてないのは、「ライブの興奮冷めやらぬうちに家に帰って聞き直して、どういうことを歌ってるのか、言葉の大事さをもう一度吟味してもらって、ただカブイてるやつらっていうのとはまた違ったHELLMETZの見方を見つけてほしい」(Ju-ken)という観客への期待を込めている。

 ライブでは、HPで販売されているカスタマイズされたHELLMETZ専用のヘルメットを被ったファンたちも集まり、毎回盛り上がりをみせるが、なによりメンバーたちが楽しんでいるのが伝わってきて気持ちがイイ。この春には2ndマキシの発売も控え、あわせて東名阪のツアーも企画中とのこと。夏フェスや、地域の町おこしイベント行脚なども積極的にやってみたいと、今年は更なる展開も期待出来そうだ。メンバーの意識改革がバンド内に持ち込まれて、独自の音楽を生みだすHELLMETZの世界に参戦するのは、今からでも遅くない。

http://hellmetz.blog111.fc2.com/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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