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 ライブの帰りに大量にもらうフライヤーやチラシ(ゴミじゃないからね!)。そこからまだ聴いたことのないワクワクする音楽や新たなバンドを発掘したいと思ったとき、キミなら何を頼りにするだろう? たとえばある意味センスが凝縮されたとも言える「バンド名」も、そのひとつの取っ掛かりになるのではないだろうか。今回紹介するのは、そんな一度目にしたら忘れられない強烈なインパクト名をもつバンド、「箪笥ボーイ」だ。まずこの語感がたまらない。いや、漢字が読めなくったって、字面が気になるはずだ(笑)。そして気づいたら「タンス」と「男の子」がどうしたら結びつくのか?どんな音を奏でるのか?と頭の中で想像をふくらませてしまっている。ちなみに、メンバー4人のうち、ボーカルも含め3人が女の子だという。たしかに男は一人だから「ボーイ」と単数形でいいのだが、それよりなぜ「ガールズ」じゃないのか……。いや待てよ、オレはすでに彼(女)らの術中にはまっているのではないのか?!

 ボーカルとギターのゆん(♀)、ドラムのさき(♀)、ベースのよしみ(♀)、ギターのたけちゃん(♂)で構成される「箪笥ボーイ」は、2005年9月から活動を開始し、昨年秋にはミニアルバム『TANCE BOY』をリリースしている。ゆんは箪笥ボーイ以前にも、「ワカメホームラン」「スグル」といった一風変わった名前のバンドで活動していて、さきとよしみは高校の軽音楽部からのつき合いで、共に組んでいた「ハニーフラッシュ」というバンドが活動休止中だった。そんな時、ライブハウスのオーナーに紹介されて、ゆんとさきが出会う。ゆん曰く、「最初会った時は、具体的な話は何もなくて、ただ飲んだけ(笑)」。「でもその後すぐフジロックに行ったら、あーやっぱバンドやりたい!って思う自分に気がついて、そうだって、さきちゃんに電話した」。そこから、さきがよしみを、ゆんが元ISUUEでスグルのメンバーでもあったたけちゃんを誘って「箪笥ボーイ」が結成されることになった。

 長々とそんないきさつまで書いたのは、「箪笥」の音楽の秘密は、そうやってたぐりよせられたメンバーの関係性に特徴があると思ったからだ。というのも、初めてメンバーに会った時、実は、女性3人の醸しだす“まったり”とでもいうべき空気感に、正直最初は戸惑ってしまった。事前に聴いていたCDから受ける元気でパワフルなイメージと、目の前のどこかネオアコバンドのような佇まいが、うまく結びつかなかったからだ。そして、雑談のようにとりとめのない話をしているうちに、このメンバーの距離感やスタンスが肝になってるのではないかと気づいた。逆に彼女たちに「音楽性」や「表現」について言葉で語らせることはできないし、失礼なことだろうと。

 ほとんどの作詞と作曲を手がけるゆんは、「バンドの醍醐味は?」という問いに、「コミュニケーション」と即座に答えた。それはもちろんオーディエンスとの交感という意味もあろうが、それ以前にメンバー間のということでもある。「友だちとは違う。目的がはっきりしてるから、ある意味さっぱりした関係」。さきも「ワーって騒いだりするんじゃなくて、居るだけで別にオッケー。居心地がいい」と認める。唯一の男性メンバーのたけちゃんも、率先して他を引っぱるというよりも、むしろ彼女たちの女性ならではの“感じ”を冷静に見極め、お互いの個性を引き出すようにしむけているように見える。「3人の人間性が、みなマイペースなんですよね。そのモワ〜ンとしたニュアンスやまったり感が音にも出てるというか。自分も今までやってきたバンドより逆に通じるところがあって不思議」。

 そのまったり感は、倦怠とも安穏とも違う。「みんながお互いゴムをもってたとして、その引っぱり具合がたるんでる。でもそれはいざ何かあった時にすごいパワーが出せる、余裕があるっていうことでもあるわけで」。そう、ゆんがたとえた 。

 その言葉通り、数時間後のライブ本番では、見違えるようにエネルギッシュに歌い、叫ぶゆんがいた。おっとりとしていたよしみがしっかりとベースラインを奏で、独特の優しいリズムを笑顔で叩きだすさきがいる。そして、そこにエッジの効いた味のあるたけちゃんのギターが組み合わさって、絶妙な「箪笥」のグルーヴが目の前で生成していく。パワフルでポップでダンサブルで、そしてどこかお茶目な遊び心と余裕も持ちあわせた、箪笥ボーイならではのオリジナルのロック!「インストの曲も制作中」という彼女たち。まだまだたくさんの“ひきだし”がありそうだ。

http://sound.jp/tance_boy/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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