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 Lack Of Common senseは、松田二郎を中心に高校や大学の友人たちが集結したミクスチャーバンドだ。半年前にデモを聴いて興味を持ちこの欄で紹介した時はメールでのやりとりだけだったが、CDデビューも正式に決定し、メンバー全員で都内で練習をしているという噂を聞きつけて、早速向かった。  

中目黒のとあるスタジオ。エレベーターを降りて防音の重いドアを開けると、そこは音と熱気とエネルギーとが充溢した濃密な空間だった。週末のライブと月末のレコ発へ向けてメンバー結集して望んだ「合宿」の最終日。配置された楽器や機材の脇に、食べ終えた弁当の空き箱、飲みかけのペットボトル、Tシャツや靴下までもが散在する床。こちらもすかさず靴を脱ぎ、メンバーに混ざって車座になる。  

岐阜、京都、大阪、東京と、現在5人が暮らす場所はバラバラなのでこういう機会は貴重なはず。「どんな関係でも近づいていなかったら物事進んでいかないというのが僕の哲学。逆に言うと、意見が違おうがうまくいかなかろうが一緒にいれば物事回転してくと思ってて、だからできるだけ皆で居るようにしている。こういう合宿も、テクニック的にどうとか演奏上の約束事をどうしようかっていうことよりも、一緒に3日間だけでも寝食ともにして生活していることによってできたつながり、心理的距離が縮まることの方が大きな成果だと思ってるんです」(二郎/Vo)

何を当たり前のことを、と思うかもしれない。しかし、この発言に彼の活動の原動力が凝縮されているように思える。彼は以前バンド活動を止めて独りで楽曲を作りに没頭した時期があり、その後単身カナダへ渡った。「路上でゴミ箱を叩いてパフォーマンスして、黒人がラップを浮浪者がソウルを乗せてくれた。朝から晩まで現地の人に話しかけたり、デモCDをラジオ局に持っていったり、スラム街でラッパーを募集したり、いろんな人とセッションし続けた」。同質性の強い日本から抜け出し、移民の街トロントで体当たりして身につけたリアルなコミュニケーション。分かったつもりになって意見を交わさず白痴化していくのではなく、異質なものとぶつかりながら理解し学ぼうとすることの重要性。そこでの経験が彼を覚醒させた。帰国後、彼は現在へつながるバンドを始動させる。

「音楽はあくまで表出してきたものの一部にすぎない」と言い切る彼ら。一聴しただけは扇動的に聞こえるかもしれない楽曲やリリックに、よく耳を傾けてみよう。9.11以後に噴出する「キリストVS.イスラムの構図」の虚構を暴きつつ、「強固な音と叡知の風で/価値観の壁を 一切合切 存在粉砕」することを謳い、「現在の改善にのみ内在する未来への合図」へと気づかせる〈狂信的共振〉。「区別を差別へ 我らと彼らへ 間違った論理で裁く」世相に、「学び続けるものそれがID/知識集約して高めるクオリティ」と高らかに宣言する〈Judgement day〉。単なる言葉遊びや表層にとどまらない、彼らの芯=深にある強靱な思考が見えてくるはずだ。

もちろんこの日の話題も、狭義の「音楽」を超え、現代における暴力論から、新しい地域性・コミュニティ創出の必要性の話など多岐にわたった。

「俺としては、このバンドの大きなアイデンティティっていうのは、失効してしまった“大きな物語”がもう一度描ける可能性があるところ」(ヨネ/Gt)。バブル崩壊後の精神的荒廃とオタク文化のタコ壺化に陥った90年代以降、断絶したルートを新たに繋ぎあわせて再構築することは可能か。「(既成概念や価値観を)壊そうとしてる人は多いと思うんですよ。でも僕らは作ろうとしてる。そういう意味では“ミクスチャー”こそが、いろいろ採り入れて新しい形を生みだしていくっていうことそのものだと思う。ジャンルとしても思想としても、生き方、ライフスタイル、すべてをミックスして新しいものを作りだす」(二郎)。そして錆びついた常識を疑い、一人ひとりが自分から考えること。「ようするに俺たちはこう思う、でお前らはどう思うんだ?ってこと。最終的には幸せに生きるためにどうしたら良いか、自分で考えてほしいっていう」(ナベシマ/Bs)。  

サバイバル、見渡せばそれが僕らの「日常」である。それは「苦しいことも二人で分かち合いたい/どうかこのままで神様」(〈Everybody learns to love each other〉)と願う幸せとも「等価値」に共存する。共に叫ぼう、「近い未来を無駄にしないため 今この時代を変えるしかない/常に自分をゼロだと思え いつもスタート地点に立て/21世紀奇跡を起こす 言葉と心の革命 学ぶことは戦い 尊い誓い」(〈At The Point Of Gun〉)。彼らの戦いはまだ始まったばかりだ。

http://sound.jp/loc/

Lack Of Common sense 1st Album
「Lack Of Common sense」
2006年6月28日発売

Interview&text : Eiji Kobayashi


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