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 ディスク ジョッキー[disk jockey]:レコードを次々とかけながら、話し手が軽いおしゃべりをする放送番組。また、その担当者。DJ。(『新明解国語辞典』第六版)

 ラジオのDJは別として、ディスコを通過していないクラブ以降の世代にとっては、DJと聞いて思い浮かべるイメージは、おそらくこの語意とは違ったものではないだろうか。ストイックなヒップホップのDJたちは、決して「軽いおしゃべり」などしない。ラウンジタイムのDJも見事な選曲をクールな姿で空間を演出する。しかし毎夜繰り広げられる数多のイベントの中には、レコードかけながらも歌って踊ってしゃべって盛り上げるエンターテインなDJも確かに存在するのだ。

 “魅惑のクニオ♂”もそんなひとり、いやその筆頭と言っていいかもしれない。なにせこの名前からしてただ者ではない。ちなみにmorphでは毎月恒例の好色文化村に出演しているのでご存じの方もいるだろう。初耳の方はフライヤーの写真を見てほしい、そこにはワイングラス片手にホストな笑みが……。彼こそが、“LONDON TIMES”といった'60〜のUK Rockオンリーなイベントから、松浦亜弥の曲だけしかかけない“あややナイト”(公式ファンクラブ会員のお墨つき)、さらにバブルの栄光が燦然と輝く視聴率30%のドラマ主題歌エンドレスな“トレンディナイト”(コスプレあり)まで、固定観念を緩める自由な発想で音楽イベントを提案する仕掛人なのである。

 もともとバンドマンだったクニオは、'90年代中頃に再熱したモッズブームを経て(ここでなりきりコスプレの蜜を体感)、当時のUKアーティストの誰もがリスペクトしていたポール・ウェラーにたどりつき衝撃を受ける。オープンしたばかりの下北沢CLUB Queなどで遊び歩いていた彼は、ついに自らイベント立ち上げる。その名は、
The Jamの『Sound Affects』とスタカン(The Style Council)の『Cafe Bleu』から命名した“Sound Cafe”。「Musicじゃないんです。音楽、言葉、叫び、囁き、物音、リアクション、すべて含めてSoundなんです」。そして今では都市部では定着した感のある「カフェ」文化だが、彼の考えていたCafeも、ヨーロッパのそれと同じく、様々な年代、文化、ジャンルの人々が集い、交友を深める“場”としての機能をはたすものだった。「僕にとって、人を紹介するっていうことが何よりもやりたいこと。僕がいなかったら出会えなかったヤツらをどんどん紹介して、面白いことをに結びつける。そんな化学反応的な出会いを起こしたいんです」。以来、DJ、パフォーマーとしてだけでなく、オーガナイザーとしても数々のイベントプロデュースを手がけ、「魅惑のクニオ♂」として、その名に負けない活躍をみせ、人々を虜にしていく。

 そのアイデアと行動力はどこから来るのだろう。「やっぱり、ポール・ウェラーが原点ですよ。あの人、ほんとは不器用で何もできないのに近いのに(笑)、まず思いついたことをすぐにやって、誰よりも早くカタチにしちゃうでしょ。勝手ながら、自分と似てるなって思って」。実際、彼のイベントは、“Sound Cafe”を筆頭に、東京、大阪、名古屋、神戸、仙台、札幌、沖縄と今では全国各地で開かれているが、最初大阪に進出したときにあったのは、勝算より情熱だった。「ここ(下北)でやってることが全国で通用するのか?」という疑問を自ら確かめたいという思い。いきなり現地へ乗り込んで、賛同してくれる地元のパートナー探しから、店鋪の開拓、営業時間の変更まで(例えば名古屋は数年前までオールナイトのイベントは成立しない土地だった)、イチからスタートした。「何もないところからつくりあげるっていう、'60年代のスピリットが好きなんですよね。今それがないなら、文句言ってないで自分でつくればいいんですよ」

 そんな彼がモットーとしていることは「絶対面白いものしかスタートさせない」ということ。アイデア段階のコンセプトの設定と仕込みは練りに練る。「どうやったら面白いか、そしてタイムリーかつ現在としっかりコミットメントしてるか。そしてちょっとだけ、半歩先を狙うんです」。協動するスタッフやハコもスキルより“志”重視。

「1+1が2じゃだめなんです。3でもなく、10とか20になっちゃうのがイベントでありパーテォーだと思うから、皆がひとつの方向に向いているのが大前提。お金をとっているというのがプロなのだとしたら、そこのマジックが起きないとスイッチ押した
らいけないですね」

 何か面白いことねぇかな〜、なんてウダってる君、まずは自ら飛び込んで魅惑的なクニオマジックにかかってみたら? あなた次第で世界はあっという間に享楽ステージに早変わり。

http://miwakunokunio.soundcafe.jp/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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