morph-tokyo
TOPSCHEDULEFREE PAPERFLOOR FOR A PLAYERACCESSMAIL
Pick Up Artist

城下カズ
音楽で果たす自己証明


 5月13日に2ndアルバム『LIFE IS SHORT』をリリースする城下カズ。19歳でメジャーデビューしたバンドの解散後、人生を模索しながら再びたどり着いた道はやはり音楽だった。32歳となった現在、「自分は音楽から離れてしまえば、ひとでなしになってしまう」と自覚する彼に、アルバムのミックスダウンが終わったばかりのスタジオで、これまでの道のりとmorphでのレコ初ライブを皮切りにスタートする全国ツアーへの意気込みを聞いた。

 城下の父は、70年代に一世を風靡したアイドルグループの草分け的存在、フォーリーブスの青山孝史。だが、音楽に目覚めたきっかけは父の影響ではなく、「両親が幼いころに離婚し、生きづらさがあって、自分の居場所を探していた」という中学生の頃に、たまり場になっていた先輩の部屋にあった大きなスピーカーから流れていたX JAPANだったという。「解放感があったんですよね。ロックっていいなあって」。そこからギターにのめり込んでいった。

 その後、縁あって所属した事務所で出会った5人でVIRUSを結成し、ミクスチャーロックのバンドとしてギターを担当。2001年にメジャーデビューも果たすが、03年にメンバーの脱退を機にあえなく解散してしまう。「当時21歳とかでしたから、やべぇ、俺の人生終わったって思いましたね(笑)」。そこからコンピュータによる楽曲作りをスタートする一方で、アメリカを放浪したり、六本木でバーテンダーをしながらDJをしたりと、ひとりで生きるために必死になった。「10代でデビューして、バックボーンみたいな経験がほとんどなかったので、これをやったらひとつ“ロック”のレベルが上がるんじゃないかとか思ったりして、とにかく何でもやりました。それでプレイがうまくなるとかじゃないんですけど、自分の表現を模索していくために必要なことだったと思います」

 その頃、90年代の日本のロックを聴きこんで、「日本語の凄さ」を認識し、歌詞の重要さにも気づく。また、疎遠だった父ともフォーリーブスの再結成を機に近しくなり、ライブで共演するようにもなるが、09年に父が他界。その後も他のメンバーとメモリアルライブを開催していたが、12年に個人事務所を立ち上げ、CD制作や絵画の展示などを自ら企画するようになり、13年にシングル「Fly Away!〜ボクは再生する」と1stソロアルバム『HEART』を自主レーベルからリリース。翌年からはライブ活動もスタートさせる。

 初めて自分で責任を引き受けることで、それまでゆるやかに動いていた城下の時計は急速に回り始める。「1stの時はとりあえず作品を作って形にすることがステップとして重要だったと思います。そして完成したらすぐ次が作りたくなったんです。バンドを解散してからずっとひとりでやってきたんで、今度はバンドサウンドをやりたい、もっと初心に戻って中学生の時に受けたロックの衝撃を表現したいなと」。そしてすぐにレコーディングと楽曲制作にとりかかる。

 製作では新たなチャレンジを試み、プロデュースとすべての編曲と一部作曲を年下の江畑コーヘーに任せ、サウンド面でのサポートメンバーも20代の実力ある若手を起用。江畑とは曲作りのために2人でアメリカ旅行も敢行して、そこで生まれた江畑の曲に城下があとから歌詞をつけた「LIFE IS SHORT」が、アルバムのタイトルチューンとなった。若いミュージシャンと協同して作り上げたアルバムは、これまでの城下カズが歩んできた歴史と現在の想いが、純度の高い“ロック”の結晶として見事に結実したものとなった。「みんなで作った感じがあって達成感がすごくあります」と本人も自信をのぞかせる。

 さらに、これまでこだわってきたギターを封印して、城下は今回ボーカルだけに徹しているのも新たなチャレンジだ。「 32歳で今までやってきたものを捨てるのはかなり覚悟がいりましたが、マイク1本になって何ができるのか、全力でやるしかない。言葉に責任をもって伝え、それを聞いてもらって、自己証明しながら前に進んでいこうと思います」。その決意は今、揺るぎない。まずは、「自分がいちばん変態でいられる場所、自由でいられる場所」というライブで証明されることだろう。その第一歩を、5月28日のmorphで見届けよう。

 
Official website:http://www.jetplanet.net


Interview&text : Eiji Kobayashi


Copyright 20085. morph-tokyo All rights reserved.