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 この2月にデビュー20周年を迎える水田達巳が、morphで記念のワンマンライブを開催する。「20年といっても単純に時間が流れただけ」と謙遜する水田だが、音楽で20年生きてきたということがどれだけ大変なことか、その道に進んだ者なら誰でもわかるだろう。そんな彼の口から発せられるる言葉は、そのまま音楽を志す若者たちへ向けたメッセージになった。

 まず最初に水田が語ったのは、「音楽〈で〉生きる」ではなく、「音楽〈と〉生きる」という考え方だ。「音楽で生きるというところにこだわってしまうと、それが生活の糧にならないとダメだと自分で思ったりしてしまうでしょ。音楽と生きる、それでいいんじゃないの?って思うんですよね。それが結果として音楽で生きるになってることもあるでしょう。結果的に僕もずっとそうなんですよ」。誰しも音楽(楽器や歌)を始めた時は、それを生活の手段として選んだのではなく、音楽によって生じる喜びや楽しみが先にあったはずだ。それはプロだからこそ忘れてはいけないことではないだろうか。いや、むしろその次元ではプロやアマチュアという区別は関係ないのかもしれない。「そこに気づくかどうかだよね。気づいたからって、別に人から見て羨ましがられる生活ができるわけじゃないですけど、その方が幸福感ありますよ。目に見えるかたちじゃない、絶対的な幸福感がその方が生まれやすいと思います」。絶対的な幸福感――その言葉を自信を持ってどれだけの人が言えるだろうか。

 そこで重要になってくるのは、どんな「音楽」なのかということだ。その質問に水田はズバリと「それは受け入れる音楽ではなくて、自分の命の中から生み出す音楽です」と答えた。そしていつからかミュージシャンや歌手が呼ばれるようになった「アーティスト」という言葉について語った。「本来、アーティストというのは、“深い人間性から表現できる人”をアーティストと呼ぶのだと思います。それは音楽に限らず、絵画であろうが写真だろうが彫刻だろうが同じですが、芸術はいずれも深い人間性から生まれた作品であることが大前提です。歌い手がアーティストと呼ばれるようになったのも、最初はそのような深い人間性から表現できる人だったからのはずで、それがいつの間にか、ただ“歌を歌ってる人”になってしまっている。だから本来のアーティストになるためには、深い人間性を育まないといけません。つまり“音楽と生きる”というのは、“深い人間性から生み出す歌や音楽とともに生きていく”ということです。聴く音楽とともに生きていくのも趣味としていいですけど、それは音楽から与えられていることですよね。自分の中から生み出す音楽と生きていくということは、逆に人に与えていくことです。本来アーティストというのは、与えられる立場ではなく与える立場。その差は大きいと思うんです」

 水田がこう明確に語れるようになったのは、ここ10年ぐらいだという。デビューから決して順風満帆の道のりであったわけではない。「20年で大きなことができたのかというと何一つできたわけではないし、でも20年前にデビューして、売れなくて、音楽以外の仕事もしたどん底の時期も味わって、それでも歌い続けて生きてこれているのが不思議」だという。しかし、そうして続けてこれたという事実こそ、彼が与える側の人間だったことの証明に他ならない。生きているなかで誰もが直面するさまざまな困難を糧にして、自分を変え前へ進むこと。「悩みがあって嘆くのか、さあどうやって乗り超えてやろうかって思うのか、その違いだけだと思います。でもそれが幸福感ですからね。ちゃんと受けとめて、噛み砕いて、今までと違う自分を作ってという、その繰り返しで大きくなっていく。変わらないのは後退に等しいです。でも変わり続けるためには変わっちゃいけないものが絶対あるし、変わっちゃいけないもののために変わり続けなきゃいけないことがある。まあ、人生面白いことだらけですよ(笑)」

 20周年記念ライブでは、そんな自らの「命の変動を見て欲しい」という。「歌は一人ひとりのお客さんを励ますことができる。悲しい歌を歌って流す涙じゃなて、理由がわからないけど涙が出てくる感動が生まれる時っていうのは、励ましてるんですね。どんな歌詞だろうが、絶対揺るがないテーマとしては、歌で励ましていくということ」。その果てにある究極の目標は、世界平和だという。音楽が、芸術が、文化が世界を平和にしていく。彼はそう確信している。

オフィシャルサイト  http://mizutatatsumi.com

(ライブ情報)
水田達巳デビュー20周年記念LIVE
2014年2月23日(日)@morph-tokyo
OPEN/18:00 START/18:30
前売り/ ¥3,500+1D 当日/ ¥4,000円+1D


Interview&text : Eiji Kobayashi


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