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 破天荒な生き方をしたい。別にお金があるとかじゃなくて、あいつやることメチャクチャだよって言われたいね」

 大田クルーのリーダー、サットンは、インタビューが始まると同時に、怒濤のごとくしゃべりまくった。しかも面白い。ヒップホップ界の異端児、韻を踏むより笑いをとるというMCの独演会が切って落されたのだ。が、まず簡単に彼らの紹介をしておこう。大田クルーとは、その名のとおり大田区出身のサットンを筆頭にしたヒップホップグループ。メンバーの変遷はありながら、現在はサットン、クライマ→、銀馬郎の3MCを擁し、DJフライドチキン、平八郎ファンクJr.&MAMA斉藤のサブMCをメンバーに、地元の蒲田で「ゴールデンタイム伝説」というイベントをオーガナイズし、ライブパフォーマンスとオーディエンスの満足度には絶対の自信をもつ。そして、11月24日に名刺がわりのシングル「大田区よいとこ一度はおいでチョイナチョイナ」でいきなりメジャーでビューをはたす、ネクストブレイク必死の注目株なのだ。

 まず彼らのベースはライブにある。ヒップホップのコミュニティーでは、みなイベントをもっていて、お互いのイベントに呼んだり、出演したりして輪を拡げていくのだが、それは同時に真剣勝負の場であり、乗り込んだ先のパフォーマンスで観客を圧倒し自分のイベントへ呼び込むこともできる。大田クルーはそうやって大勢を見方につけてきた。慣例になっている出演者への集客ノルマを一切課さないのも、「面白いことをやれば人は自然に集まる!」という考えからだ。実際、場所的にも不利な蒲田という地で観客6人からスタートしたイベントも、今では他所から大勢押し寄せて毎回満員にさせている。そして、ヒップホップをベースにしながら笑いという要素を取り入れたのが彼らの最大の特徴である。
「僕らは面白いこと、ふざけたことをやってるけど、それは真剣に馬鹿をやってる。ハードコアのヒップポップの人たちからは、そんなのヒップポップじゃねえって思われることも多いけど、じゃあ実際やってみろっていったら簡単にできないし、いざライブで対決しようってなった時にまず負けない。だから何いわれても絶対の自信がある」

 そう、大田クルーは徹底的な現場主義者なのだ。

「ライブではいかにオーディエンスを飽きさせないかってことが重要。とにかくお客さんが喜ぶことをやりたい。週末の夜に日頃のストレスを思いっきり発散させてみんなに笑って帰ってほしい。ポジティブが基本」。サービス精神も旺盛なサットンだが、実は、彼はヒップホップを聴いて育ってはいない。ラップを始めたのも、友人にコンテストに出ようと誘われて、そこでいきなり準優勝したのがきっかけだ。「ラップもほとんど聴いてなくて、だから誰かに習ったことないし、先生もいない。音譜もかけないし、音感もない(笑)。だからラップのセオリーを無視しためちゃくちゃな作り方。でもつくったらいいものができちゃったって、そういう感じ。だからラップミュージックは誰でもできるんですよ。その分競争も激しいけど、客の反応がダイレクトで結果も歴然とわかる。可能性も大きい」

 一見暴走しながらも、的確に話を進めていく彼の話を聞いてるうちに、物事の考え方やアイデアの生み方まで、サットンが根っからのクリエイターだということがよくわかる。それは父親の職人気質を受け継いだところもあるかもしれない。「何かをつくるのも、既にある部品から考えるんじゃなくて、完成品からイメージして、これに近づくためにはどうしたらいいかをいつも考える。だからライブでは、お客さんが盛り上がってるのをイメージして、それを実現するためにはどうしたらいいかって毎日考えてる」。イメージできれば実現できる。なんと彼らは、デビューシングルのPVに現職の大田区長を出演させているのだからスゴイ。

 すべてのことにマニュアルが存在し、成功へのステップアップさえ「型」に捕われてしまっている自称クリエイターが数多はびこる中で、まさに型破りの大田クルーがメジャーデビューを果たすのだから痛快だ。「今はインディーズで2、3枚出して、それからメジャーっていうのが普通になってる。でも僕らはもともとインディーズに興味がなかったし、スタンス変えずにやってたら、理想的な形でいきなりメジャーで出せるという運をつかんだ。ただ取ってつけたグループっていうんじゃなくて、叩き上げで実績つくってきてるから、変な気負いもないし、規模は大きくなってもスタンスも変わらないつもり。ほんとふざけてやってんなーって思ってほしいんですよ」。サットンは、そう言って高らかに笑った。

大田クルーHP:http://www.otacrew.com

Interview&text : Eiji Kobayashi


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